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●新ラマーズ法とは
1. 条件反射について
 Dr.ラマーズは条件反射理論について述べられていますので、 パブロフの反射理論について述べます。
 パブロフは帝政ロシア時代に条件反射理論を発表しました。 その後、 ロシア革命が始まり唯物論の理論的根拠として廣く研究が進められた経過があります。
 犬に餌を与えるとき同時に鐘を鳴らします。 これを何度も繰り返すと、 鐘を鳴らすという条件だけで餌を与えないでも、 犬は唾液を流す反射を起こす実験です。 人は言葉を持っているので、 餌という言葉を聞いたり、 思い起こしたりすると自然に唾液がでます。 思うことは言葉がついて回ります。
梅干しを食べるとスッパイのは当然です。
梅干しを見ただけでもスッパイ唾液が出る。 人は梅干しという字を見ただけでもスッパイ唾液が出てきます。
 要するに繰り返し学習すれば反射的にそれを行うことが出来るようになるという理論です。
 普段、 私たちが日常に行っている事ですが、 他人に対して強制的に行えば洗脳になります。 それは、 ごく一部の人の意のままになり、 好ましくありません。
2. 新ラマーズ法の原理
 分娩について、 数千年にわたって人類に一つの呪いがかかっていたのです。 出産と痛みは永遠に密接に互いに依存すると思われていました。 そして、 出産という一生のうちで最もほめられる行為を恐怖と諦めの中でただ耐え忍ぶことを余儀なくされ、 運命的な伝統として代々伝えられてきました。
 これらは、 受胎、 妊娠、 分娩についての生理的事実の無知、 誤った理解、 間違った教育によって強められ、 混乱を深める母地をつくりました。
 そして、 出産の痛みを軽く、 あるいは無痛にするための薬剤、 また、 催眠法に頼ることは産婦の心の中に痛みと恐怖に対する宿命的な想いを強くするのに役立つだけであったのです。
 出産の痛みは社会的環境と生理学の混合物であること。 純粋な痛みは存在しません。 その人の置かれている環境に支配されているのです。
 情報の重要性。 言語や談話が生理的、 治療的因子として決定的な役割を持ちます。 パブロフは話し言葉を第2信号系となづけました。
 この条件づけられた痛みと恐怖を育む思いを取り除き、 混乱した肉体と精神 (身体と心) の安定を図るために新ラマーズ法が生まれました。
3. 新ラマーズ法の組み立て

 A. 妊産婦教室
 B. 弛緩法、 呼吸法

それぞれ教室で学びます

A. 妊産婦教室
 妊娠、 分娩、 育児について、 正しい知識を身につけること。 それは、 産むのは産婦自身であること、 その自覚を持てば妊娠中の過ごし方、 分娩時の陣痛の対応の仕方、 それを乗り越えた時の感動に引き継ぐ育児への心構えを学びます。
以上を一つの流れのように身につけて行くのに弛緩法、 呼吸法が必要になります。
B. 弛緩法、 呼吸法
 ラマーズ法が始まった頃はあまり重視されませんでした。 そして、 アメリカ経由で移入された頃と現在とは相当に開きがあります。
 ただ、 弛緩法、 呼吸法を徹底して行わないと、 教室で学んだことは殆ど役に立ちません。
*弛緩法
 私たちは絶えず何らかのストレスがあり、 心身共に緊張を強いられています。したがって、
弛緩法は古くから色々な方法があります。 新ラマーズ法の場合は呼吸法と連動する弛緩法を選びます。
 意識的に筋肉の力を抜いて行きます。 まず、 首と肩の力を抜き、 それを胸、 背中、 腹、 上肢、 下肢に及ぼして行きます。
実技の項を読んで幾度も練習して下さい。
*呼吸法
 筋肉の弛緩を徹底させるために呼吸法を行います。
 まず、 呼吸法の種類は、
  a 胸式呼吸
  b 腹式呼吸があります。
 私たちが普段行っている呼吸は胸式呼吸です。 胸郭を前後左右に容積を増減させる呼吸です。 この呼吸は浅く、 弱々しくなりやすく、 また、 強くしつづけると疲労します。
腹式呼吸は横隔膜を収縮、 弛緩させて胸郭の容積を上下に増減させる呼吸です。 次に、
  c 無意識呼吸
  d 意識呼吸があります。
 無意識呼吸は延髄に中枢があり、 自律神経も関わっていますが、 運動神経の支配下にあります。 一般に胸式呼吸が相当します。
 意識呼吸は自分の意志で呼吸をする方法です。 大脳の皮質が関係しています。これには、 呼気 (吐く息) のみに意識を使う呼吸と、 吸気 (吸う息)、 呼気 (吐く息) 共に意識を使う呼吸がありますが、 これは深呼吸になり緊張の連続で、 長い時間つづけることは出来ません。
4. 自然のゆっくりした呼気 (吐く息) は腹式呼吸になります。
 呼気にのみに意識を使う呼吸で、 自然に腹式呼吸になります。
 出息長・入息短…長く吐いて、 短く吸う長く吐くことに意を使い、 吸うことに意を用いない。
 一呼、 一息の間に調和がとれる呼吸法です。
5. 筋肉の弛緩はゆっくりした吐く呼吸によって得られます。
 筋肉の弛緩は、 感情の中枢の視床下部より大脳皮質に伝えられ、 脳全体のバランスがとれるようになります。
6. 息を吐くことは、 こだわり、 痛み、 悲しみ、 妬み、 怨みを解かすといわれています。
7. 息の乱れは心の乱れ。
 苦痛に耐え忍び正しい呼吸の実践が必要です。
8. 心は心を制することが出来ません。
9. 呼吸法は単に痛みをそらすのではありません。
 
*新ラマーズ法を実際に行う時の要点
1. 過去の呼吸法
  分娩第一期は緩徐な呼吸
  分娩第二期は急速な呼吸といきみ
  胎児が会陰に現れたときははずみ呼吸 (短足呼吸)

  以上の呼吸法はどうしても激しい呼吸になり、 換気過剰症になります。 換気過剰症になれば、 動脈管が収縮します。 脳の血管が収縮すれば脳は酸素欠乏状態になり、 頭がボーとしたり、 幻覚、 幻想が現れることがあります。 それと共に子宮動脈が収縮してお腹の赤ちゃんが弱ってきます。
2. 現在の呼吸法…実践編を良くお読み下さい。
分娩では子宮収縮と胎児が産道をとおる強い緊張があるので、 緊張につながる吸う動作をしない。
長く、 静かに吐き終わると、 自然に肺の中に空気が短時間に満たされます。
弛緩法で習ったように肩の力を抜きながら静かに声を出さずにリズムに乗って息を吐いて行き、最後に腹部、 臍のあたりの筋肉を緩めます。
フーウンの呼吸法がありますが、 赤ちゃんの頭がそこに見えだしてから (排臨直前) になってから行う。
ウンのいきみを早期に行うと、 骨盤底筋肉を収縮させて胎児の下降を妨げ、しかも疲労を増す結果になります。
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*指導者の皆様に
 新ラマーズ法分娩は、 助産婦の一人舞台と勘違いしないでください。
医師、 助産婦、 看護婦、 清掃係、 配膳係、 院内すべての者が協力しないと成功しません。
 たとえば、 清掃係がたまたま部屋に入ったとき、 1回でも2回でも一緒に呼吸法をするなど。
 ただ単に横に付き添って言葉をかけたり、 マッサージをするだけでは、 しばしば産婦は強い陣痛を乗り切ることが不可能になり、 パニックを起こすことがあります。
 したがって、 呼吸法は不可欠になります。
 入院時より分娩するまで、 その時期にあった呼吸法のうち産婦がやりやすい方法を一緒にしてあげましょう。 夫、 家族も共にするようにすすめます。 夫の方が呼吸法が上手な場合が良くあります。
 もっとリラックスして、 とか呼吸法をうまくしなさい、 など指示のみをしてもうまく行きません。 している呼吸法をほめて、 痛みが楽になったことを実感してもらって下さい。
 また、 お腹の中の赤ちゃんも無駄な圧迫がなく元気なことを、 例えば分娩監視装置の記録紙を見せて説明してあげて下さい。
 大切なことは、 産婦自ら努力するようにし向けることです。
 なお、 分娩体位については、 従来の仰臥位分娩は母体、 胎児に悪影響を及ぼすことは衆知の事実で、 特別な処置をするとき以外はとらないようにします。
 産婦の自由な体勢にまかせるのではなく、 胎児が正しい回旋をするような体勢、 産婦を疲労させない体勢を指導、 納得、 実行させるべきです。
         (分娩体位についてのビデオ、DVDを別途販売しています)
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 以上のようにしてこそ、
自分の力で産んだという感動と喜びを心から味わうことが出来ると思います。
 また、 万一、 途中で異常があり、 何らかの処置を受けたとしても、 共に努力したという達成感を持つことが出来ます。
 この方法は、 明確な意識と意志の中で、 ゆるぎのない心身の安定を求めるもので、 「うっとりとした催眠状態」 に導く方法ではありません。
 妊娠中の短い期間ですが、 弛緩法、 呼吸法を繰り返し練習して、 自分自身納得のいく出産の日を迎えてください。
 また、 出産後も何かの機会にこの方法がお役に立つ事があるかと思いますので、 心の片隅にしまって置いてください。
以上
参考文献
1. ラマーズ法原著 フェルナンド ラマーズ
翻訳者 杉山次子 鳳鳴書店
2. 釈尊の呼吸法 木村弘昌 柏樹社
3. 自己弛緩法 原野広太郎 講談社現代新書
4. 大空が語りかける 内山興正 柏樹社
 この文は、 平成13年9月15日に長崎での第19回ラマーズ法研究会でお話ししたものです。 一部省略、 加筆しています。



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